8月の王の菜園(ポタジェ・デュ・ロワ)用の美をみる

こちらはルイ14世の大好物だったという桃で
その名もヴィーナスの乳房(Téton de Venus):
果実はついていませんでしたが、
石壁に這わせてあると、
葉っぱだけでもなんだか絵画的なワンシーンです。

用の美の魅力を発見


実はこの石壁に秘密があって、よく見てみると、
つぶつぶのテクスチャーがあります。
何だか分かりますか?

壁のディテール、レンガ色の粒々に注目

 

これはレンガを砕いた破片なのですが、
壁の保温性を高めるために混ぜ込まれているのです。
そんな面倒なことをせずにレンガの壁にすればいいじゃないの、
という声も聞こえてきそうですが、
当時、
焼成して生産するレンガは高価な資材だったので、
このように小さく小さく使ったのだそう。

ほかにも例えば、
写真はないのですが、掘り下げて構築された菜園の壁には
いくつものアーチ形の連絡通路があります。

大人がちょっと屈んで通ると丁度良いくらいの高さ設定なので、
背の高い人は頭上注意。
何でその高さなの?というのにはちゃんと理由があって、
この通路の高さは、
庭師(ジャルディニエ)たちが
一輪車を押して通るのにぴったりに作られているのでした。

菜園の全体を取り囲む壁や、掘り下げた構造、
壁に沿って、あるいはパーティーション代わりに平面に広がる
エスパリエ仕立ての選定は、果実に太陽の光を満遍なく当てて
かつ収穫もしやすいようにと考えられた形です。
装飾のための庭ではなく、菜園らしく、
あらゆるディテールが実用のために考えて作り込まれています。

しかし用の美というように、
よく考えて作り込まれた、完成された実用の形は
シンプルで美しい。
歴史的庭園でもある王の菜園を形づくる様々なディテールには
そうした用の美の魅力があふれています。

伝統の剪定技法の果樹コレクション

ちなみにこちらのエスパリエ仕立ての立派な洋ナシは
すでに樹齢100年以上経っているのだそうです。
果樹の寿命はそんなに長くないことが殆どなので、
随時植え替えが行われています。


エスパリエ仕立て
こちらはまだ植え付けて2~3年の若木たち。
ゆっくりと、忍耐強く、形を導いていきます。

同様の姿に持っていくには少なくとも25年は必要だそう。
長い時間と多大な手間が必要なので、
現代のファスト文化の逆をいく、
採算度外視のスローな手法とも言えるでしょう。

こちらも植え替えて数年です。
まだまだ、これから。

ヴァンサン型と名前がついた剪定のモモの木。

 

伝統的な技術を継承していく場だからこその
様々な剪定技法の果樹のコレクションは
王の菜園の見どころの一つです。

●王の菜園(ポタジェ・デュ・ロワ)関連記事はこちらから

 

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