versailles neptune vases

ヴェルサイユの庭園彫刻

フォーマル・ガーデンに欠かせない、ヴェルサイユ庭園の要所要所を飾る大理石やブロンズの彫像たち。なかには、オリジナルはすでにルーヴル美術館に所蔵されている作品など、17世紀のフランス美術の名作が幾つも含まれているほどで(その場合庭園に置かれているのはレプリカ作品になります)、さながら野外彫刻美術館とも言われるほどです。 なかでも庭園彫刻とも呼べる特徴的なものが、先日ご紹介したテルム(胸柱像)や、壺型の彫刻たち。 ちなみにこちらの壺の意匠はすばり、ルイ14世を象徴する太陽神アポロンです。

壺型の庭園彫刻さまざま

壺型の彫刻は、ちょっと注目してみると、庭園の至るところに配置されています。釣鐘を逆さにしたような形は古代ギリシャのクラテルと呼ばれる広口の壺の形から来ているようです。元々は植木鉢や水鉢の役割も兼ねて、陶器や金属製の壺が庭園装飾として使われたのだとか。 現在も、庭園の南北軸(ヴィスタ)の北側の締めとなるネプチューンの泉水の噴水では、噴水の噴射口を隠し壺から水が溢れ出るような仕掛けが見られます。   また、宮殿内で使われた特別注文の銀製の植木鉢と同じデザインで、庭園用にブロンズで作られた壺などもあります。 しかしながらヴェルサイユの壺型彫刻の興味深いところは、実用を兼ねた装飾から離れ、庭園を飾る純粋な美術作品として発展して行ったところにあります。

ヴェルサイユの壺型彫刻の歴史

17世紀のフランスにとって、古代ローマの流れを引き継ぐイタリアは芸術の聖地でした。フランスの文化振興のためにアカデミーフランセーズが作られ、ローマのヴィラ・メディチに多くの優秀な芸術家たちが派遣されます。それは彼らが本場の美術を研鑽するためだったのですが、また一方で、フランスに最高の美術品を収集するために、芸術家たちは入手しうる古代芸術の名品をバイインクし、買えない名品はレプリカを制作して本国に送るという使命を担ってもいたのです。 こうした流れのなかで、例えば、古代彫刻の名作とされていた(現在でもそうですが)「メディチ家の壺」は買えないので、レプリカが制作されてフランスに送られ、今でもラトナのパルテールの一角を飾っています(現在は作品を良い状態で保存するため、庭園に置かれているのは、さらにそのレプリカ)。 メディチ家の壺 [写真]古代彫刻の名作をレプリカした「メディチ家の壺」

 

さらには古代彫刻の模倣に止まらずに、フランスのオリジナルの壺型彫刻も制作されるようになります。宮殿至近の場所である水のパルテールを飾る、対になった壺型彫刻「戦争の壺」「平和の壺」は、ルイ14世の戦勝を記念する作品。完全に一つの美術作品の形として壺型彫刻が作られ、庭園を飾るようになっていきます。 [写真]ルイ14世の戦勝エピソードを語る「戦争の壺」

 

また面白いのは、フレンチ・フォーマルガーデン(フランス整形式庭園)がヨーロッパ各国に伝播するとともに、今度はヴェルサイユ庭園の壺型彫刻のレプリカが、バッキンガム宮殿の庭園に現れるなどの現象が起こっていくところ。 ヨーロッパの庭園のスタンダード的なイメージの壺型彫刻、さまざまな時代背景を重ねて読み解くこともできる、奥深さがあるのです。
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