樹々で巡るプチトリアノン

 

 ヴェルサイユ庭園の「素晴らしい樹々」

ヴェルサイユ庭園にはどれくらいの数の樹木があるのだろう?ヴェルサイユの宮殿やトリアノンの庭園の敷地内には35万本の樹木が植わっているそうで、聞いただけで圧倒される。

その数の木々のなかでも、樹齢300年を越える最長老の古木など約30本ほどの大木が、特に注目に値するヴェルサイユの「素晴らしい樹々 arbres admirables」として、様々な場所から庭園を見守っている。

プチトリアノンエンジュの古木

プチトリアノン庭園内にも十数本の「素晴らしい樹々」があるのだが、堂々とそれぞれに個性的な姿は、探さなくともずっしりと目に入ってくることが殆どだ。

表紙の写真、トップバッターはプチトリアノンの宮廷建物脇に佇む樹齢250年を超えたエンジュの大木。別名パゴダ(寺院の塔)の木とも呼ばれる中国原産のエンジュは、イエズス会の宣教使によって中国からヨーロッパに伝わった。マリー・アントワネットが1764年に植樹させたトリアノンのエンジュの苗木は、イギリスから持ち込まれたものだそう。老齢にも関わらず、フランス各地の森林や庭園の樹木に大被害を与えた1999年の大嵐にも耐えて、奇跡的に生き残った古木でもある。

 その姿は神々しいほどで、プチトリアノンでの私的な宮廷生活を華やかに謳歌した王妃マリーは程なく革命のギロチンの下に消え、荒廃した庭園を、やがてナポレオン1世が修復し、....と現在に至る様々な歴史のなかを生きて来たことを思うと、なんだか感慨深くなってくるような。

 やはりプチトリアノン宮殿の出口近くに聳え立つのは、18世紀中頃に著名な植物学者ベルナール・ド・ジュシューが植えたとされていた樹高25mほどのレバノン杉の大木だ。近年の調査で実際の植樹に年代はずっと後であることが判明したのだか、その壮麗な姿の美しさには変わりがない。

そして、こちらはコルシカマツの大木。フランス語では「美の島」とも呼ばれるコルシカ島は、何を隠そうナポレオンの出身地である。ナポレオン1世が荒れ放題になっていたトリアノンの庭園を修復し、若い皇妃マリー=ルイーズにプレゼントしたのが1810年。このコルシカマツもその修復の際に植樹されたのだそうだ。ふむ、なるほど。

ひょろっとした針葉樹が続いたので、もうひとつ雰囲気の違う感じの「象の足」というあだ名がついたズッシリとしたプラタナス(モミジバスズカケノキ)の木を見てみる。幹回りは7m程あり、確かに象の足みたいな外観である。古くは古代ギリシャ時代から好んで並木などに使われて来たのだそうだ。

 これらはトリアノンにある「素晴らしい樹々」に選ばれた古木、大木のごく一部だが、歴史の層のように重なる様々なエピソードを物語る樹木たちを辿って歩くのもまた一興である。

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