ヴェルサイユ、トピアリー

フォーマル・ガーデンのマストアイテム、トピアリー

ヨーロッパのフォーマル・ガーデン(整形式庭園)に不可欠なのがトピアリー、ツゲなどの常緑樹を円錐形や円柱形、さらに様々な幾何学形をに刈り込んだ庭木です。

一年中変わらない彫刻的な姿で、庭園の空間構成を支えるその整った姿形には、抑えたエレガントさがあります。

しかし、樹木らしからぬ人工的な姿には違和感を覚える方も多いかもしれません。
自然な樹形を無視した、無理矢理な姿に刈り込まれて、木がかわいそう、と思われることも。

トピアリー

幾何学模様が理想美だった時代

自然に反する形に刈り込まれてかわいそう、というトピアリーに対する印象が、日本人に限らず、
現代のフランスの多くの人々にも共通する感想だと聞いたら、驚く方もあるかもしれません。ところが、実はそうなのです。

これには、時代の感性の変化が如実に見えるのが面白いところです。
というのも、かつて、ヴェルサイユの庭園が作られた時代、現代に比べたら、人間の力の及ぶ範囲はまだまだ限られていました。一歩街の外に出れば、田園地帯、そして森林が広がり、科学や医療も未発達だった時代、まだまだ自然の脅威は大きかったのです。

そうした時代に、人の手が作り出す整った幾何学形には、人の技の達成地点を意味するような、文明のシグニチャーのような象徴的な意味合いがありました。自然の脅威を克服した、整った完璧な調和のヴィジョン、それが幾何学形の象徴するところだったと言えます。

あらゆる場所で都市化が進み、却って自然を身近に取り戻すことの方が大事になってきた現代とは、まったく違った世界観から生まれた庭園装飾がトピアリーだったのです。

トピアリー

時代の思想と感性が潜む庭のかたち

トピアリーはすでに古代ローマ時代から作られていたようですが、大々的に普及したのは16世紀以降のヨーロッパにおいてでした。

それは単に自然樹形を否定するのではなく、人の手を加えることによって(人工的な調和の形である幾何学形を与えることによって)樹木が潜在的に持つ美のポテンシャルを極限まで高めた姿なのだと考えられていたそうです。

所変わればなんとやらで、まったく違う思想、美意識の土台の上に、フォーマル・ガーデンの構成や装飾が作られていたのだなあと分かります。庭園は、知れば知るほど奥深い。フォーマル・ガーデンはスタイルとして現代にも生き続けていますが、その世界観を支える思想や美意識を知るのも、なかなかに興味深いことではないでしょうか。

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