jardins de versailles

彫刻の庭園ヴェルサイユ

ヴェルサイユ庭園は、彫刻の庭、野外彫刻美術館とも言われるほどに、沢山の彫刻に飾られています。宮殿建物近くの水のパルテールや噴水にはブロンズ彫刻、庭園内の通路やフォーカルポイントには主に大理石彫刻が配置されていますが、その数現在も400点以上(かつてはもっと多かった)はあるのだとか。

ヴェルサイユ庭園の装飾プログラムとは

ヴェルサイユ庭園の彫刻装飾には、宮殿の建築や室内装飾と共通する、太陽王ルイ14世の絶対王権の賞揚という壮大なプログラムがありました。たとえば、庭園の中心軸をなす東西のヴィスタでは、ギリシャ神話の太陽神アポロンにまつわるエピソードを表現した様々な彫刻作品が、空間構成の要になっています。 東西の中心軸線状のタピベール(緑の絨毯)からアポロンの泉水、大運河(グランカナル)への眺め。

庭園を彩る太陽神アポロン

水のパルテールを降りると、ラトナの泉のパルテール、この噴水の彫刻装飾は双子の太陽神アポロンと月の女神ダイアナの母親ラトナにまつわるエピソード。さらに大運河の方に進むと、戦車に乗って空に舞い上がるアポロンの彫像の噴水。アポロンが空に登ると朝になり、一日の道のりを終えて地上に降りると日が暮れる。世界の中心的な存在とも言えるこの太陽神をルイ14世の象徴とし、様々なギリシャ・ローマの神話を取り混ぜた装飾計画が総合的に庭園全体に施されています。

建築と美術、造園のコラボーレション

この宮殿と庭園を繋ぐ意匠の一貫性は、実はなかなかに貴重なもの。というのも現代の造園の問題点として、建築の優位ということが前々から指摘されています。例えば身近なところでは、住宅を建てるのでも、まず家が先で、庭は後回しになりがち。予算面でも同様で、大部分が建物に使われてしまい、庭には僅かな予算しか残らなかったり。しかしながら、庭も大切な生活空間なので、建築計画と同時に双方のバランスをとりながら計画出来るのが、双方にとって理想的です。 その点においては、1661年から建設に着手されたヴェルサイユ宮殿と庭園は、すでにヴォー・ル・ヴィコント城で抜群の成果を出していた建築家ル・ヴォー、造園家ル・ノートル、画家で装飾家ル・ブランのチームが中心となって行われたゆえか、建築と造園が一体を成す空間が作られた幸福な例と言ってよいでしょう。

緑の建築空間

庭園の緑の壁のような刈込みの生垣のニッチに、大理石の彫像が配置された様子などは、まさに青空の下の建築空間で、フレンチ・フォーマル・ガーデンの造形自体に、建築的要素がそのまま屋外に延長されたかのような、言わば緑の建築といった側面が強いことも、この一体感をより強めているとも言えるのかもしれません。

様々な庭園彫刻

東西の中心軸上の太陽神アポロンにまつわる神話にのみならず、庭園内には様々なギリシャ・ローマ神話からの登場人物やエピソードが散りばめられています。17世紀当時の彫刻作品リストでは、それらが大きく3つのカテゴリーに分けて登録されています。彫像(いわゆる人物像で群像または単体)、テルムと呼ばれる胸柱像、そして壺型彫刻です。 芝生とトピアリーの緑、刈込みの壁の緑にアクセントを添える白の大理石の彫刻、潔い簡素さが上品かつスタイリッシュ。

テルム(胸柱像)とは

テルム(胸柱像)は、上半身は通常の彫像、下半身が柱の形をした庭園彫刻を指します。古代ローマの境界の神テルミヌスが境界標石の上の半身像として表現されたことに由来するもので、境界の囲いとして用いられ、庭園彫刻として定着したものです。 境界の標識からインスパイアされたものらしく、庭園でも通路脇などをさりげなく囲むように配置されています。足元は柱で造形としては簡易なので、沢山の彫刻を作るのに、手抜きの意味もあったのではないか、という指摘があったのですが、確かに、宮殿の建物近くや中心地には重要な、また作りも複雑なずっしりとした群像がおかれる一方、外側に向かうにつれて、どちらかと言えば、簡素な、地味な彫像が配置されています。極めてロジカルですね。 テルム(胸柱像)とともに、庭園のそこかしこを飾るヴェルサイユ庭園の名物とも言えるのが壺型の彫刻です。これがまた面白いのですが、だいぶ長くなりそうなので続きは次回に。   [追伸] この彫刻の話の発端は、先だって、九州アンスティチュでの映画「庭についての対話」上映会イベントでヨーロッパの建築・室内装飾がご専門の小栁由紀子先生と、ヴェルサイユの庭園をテーマに対談講義をさせていただいたことです。庭と室内を繋いで一緒にお話させていただいたのは初めてでしたが、これがなかなか面白くて、せっかくなので、一部でもメモがてらシェアできたらと思います。
スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事