シャトー・ラ・コスト、プロヴァンスの庭

南仏プロヴァンスのアーティー&ネイチャーなワイナリー

シャトー・ラ・コストは、南仏エクス・アン・プロヴァンスとリュベロン国立公園の中間あたりに位置する、200haの広大な敷地に130haのぶどう畑を抱えるオーガニック栽培のワイナリー。安藤忠雄設計のアートセンターを始め、ハイテクなデザインの醸造所はジャン・ヌーベル、フランク・ゲーリーの野外音楽堂に、レンゾ・ピアノ、ノーマン・フォスターと世界の名だたる建築家の建築と、さらにはこの土地に合わせて計画された、現代の巨匠たちのアートピースに囲まれた、アーティーなワイナリーです。


アートセンターの入口では、黄葉した木々を背景に、ルイーズ・ブルジョワのアイコン的な蜘蛛の巨大彫刻のお出迎え。


アートセンターの回廊、天井の空に開いた楕円のドームは直島のホテルを思い出させるけれども、その奥に広がるのは、まさにプロヴァンスの風景の一場面、延々と続くブドウ畑。

ワイナリーなので、まずすべきは醸造所の見学とかテイスティングなのかもしれないのですが、それを飛ばしても、この周りの環境がまた素晴らしい。

リュベロンの自然と世界のハイアートのマリアージュ

広大な敷地は、各所に世界の建築家やアーティストによるアートピースが設置された、さながら野外美術館です。一歩足を踏み入れると、アート作品を巡って、ブドウ畑やリュベロンの山々を眺めつつの、自然に広い敷地を散策に誘われます。


例えば、これは通路に見えるかもしれないのですが、実は2年がかりで制作された、艾 未未(アイ・ウェイウェイの彫刻・建築作品。緩やかな傾斜に沿って作られたこの現代の通路は、上方の古代ローマ街道の石積みの壁の道に繋がります。
敷石には、現在の移民問題などを暗示すべく、歴史的にヨーロッパへの主要な玄関口だったマルセイユ港の石が使われているのだそう。


建築的な作品が多い中で、唯一の動物である森のキツネたちは、動物愛護にも力を入れているアメリカ人作家ミシェル・スティープの彫刻。同じように見える何匹かの群れをなすキツネたち、たとえ同じように見えてもそれぞれが必ず異なる自然の姿になぞらえて、実は微妙に違っています。
ちなみに子どもさんは、このキツネに乗ってもいいのだとか。


ブドウ畑の脇は、プロヴァンスの森の中でもよく出会う昔からの積石みの低壁が続きます。かなりの高低差のある200haの敷地内、4kmに渡る作品をめぐる散策コースは、オークやマツなどこの土地の木々に囲まれた、自然観察コースのようでもあります。アート作品を巡って歩くので、前に進むモチベーションが生まれ、様々な発見をしながら、要所要所で角度が変わるブドウ畑やオリーブ畑、そしてリュベロンの山々の風景を眺めながら、気がつくと4km歩いていた、という感じです。

ハーモニーのひみつ

所々にラベンダーの植栽など、やはりプロヴァンスらしい花あしらいがあり、ガストロノミーなレストランの食事の前後にもふらっと散策できる整った散策路がありながらも、全体的には自然な林間地帯の良さが保たれた中に、それぞれのアートピースが実に良い具合に収まっている、この非常にバランスよく作り上げられた人工と自然の調和が素晴らしいこのワイナリーの庭、どんな経緯で作られたのかが気になるほど。

そのひみつはやはり、計画の経緯にもあると言っていいでしょう。
2004年にこのワイナリーを買ったアイルランド人のアートコレクショナーであるオーナーは、世界の建築家・アーティストたちを呼び寄せます。手つかずの状態から、アーティストたちは立地を選び、作品を構想したのです。一般公開されたのは2011年からだそうで、その後も作品が加わっていますが、なるほど、特に広大な空間を破綻なく構想するには、やはり最初が肝心なんだなあ、と。

最後に、敷地内にいくつかある安藤忠雄作品から一つ。


ミニマル、禅的なイメージのパビリオン、遠目には焼杉かと思いましたが、そうではない加工の木材仕立て。階段に使われた小砂利など、枯山水や茶庭のしつらいを思わせるようなスタイリッシュな和テイストが所々に存在感を放ちます。

他にも様々なアート作品、素敵なレストラン、話題が尽きないワイナリーです。より詳しくは下記のリンクへどうぞ。


ブドウの葉が落ちる前の、黄赤紅した晩秋のプロヴァンスから。
ヴァカンスシーズンは来場者も多そうですが、広いからそんなに気にはならなそう。食事もテイスティングも、ぜひ時間の余裕を持って訪れてみたい場所です(ちなみにホテルやスパも完備しています)。

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