セール・ド・ラ・マドンヌ、南仏リビエラの庭園[2]

調和のあるジャングル

改めて、伸びやかに繁茂する様々な植物に囲まれる至福の感覚は、
この庭園の最大の魅力ではないかと思います。
そして、それはどこから来るのか、、、
作庭者のジョンストン自身が、自らプランツハンティングに出かけるほどのこだわりのプランツマンであったこと。エキゾチックな植物を適応させることの出来る温暖な気候がその植物愛に応えて、このような稀有な格調高くかつナチュラルな雰囲気のガーデンが生まれたのでしょう。

そして現在の「調和のあるジャングル」とも言われる庭の存在を、実は作庭者の手を離れたのちの様々な変遷が支えています。


敷地上の方の屋敷の様子


藤棚が覆う見晴台
どこをとっても、整った構造の間を縫うように緑が繁茂する。

歴史的庭園の変遷、再生

ジョンストンがこの庭の作庭を始めたのは1920年代、1958年に亡くなった後には何人かの所有者の手を変え、1990年には不動産開発で壊されかけます。史跡指定されたことでその難を逃れ、フランス国立沿岸域保全整備機構の所有となり、荒れ果てた姿からの修復が行われ、現在の姿となっています。

 

自然の中に埋もれてしまった元々の庭の姿を再生するのは、容易なことではありません。セールドラマドンヌ庭園については、同じくジョンストンが作庭したイギリスの名園ヒドコート・マナーに沢山のアーカイヴが保管されていたことなどから、過去のアーカイヴも参考に修復を進めることができたのだそうです。ヒドコート・マナにはジョンストンの旅行記も保管されており、その中から発見されたセールドラマドンヌ庭園のための植物リストから、現在、さらにジョンストンのチョイスの植物を庭園に加えていく試みが行われています。

もう少し庭園内を散策してみましょう。

池と温室
寒さに弱い植物の冬越しや種まきやら、温室は庭園に欠かせないアイテム。


温室の中はこんな感じ

地上の楽園

ところで庭園の修復ということについては、成長し変化していく植物が主体の庭園の姿は、変わっていくことが当然でもあり、完全な再現は不可能ですし、それが本当に大事なのかどうか、ということもあります。

この庭園では、オリジナルの形の完全な再現を目指すのではなく、その後に庭園に加わった変更なども歴史の軌跡として許容しつつ、作庭者ジョンストンがこの庭で表現したかったのであろうエスプリを再現、もしくは創造しようとしています。

フォーマルなガーデンのスタイルも、ワイルドな植物の使い方にも、双方に長けたジョンストンらしい調和のあるジャングル的な景観。繁茂するエキゾチックな植物に埋もれるようなこの庭園は、彼にとって「地上の楽園」そのものだったようです。この場所の醸し出す植物たちとともにある至福感は、そんなところから来ていたのかもしれません。


屋敷建物付随のテラスのひとつは、スペイン=ムーア様式の庭。

かつてこのテラスは巨大な鳥かごとして使われていて、インコなどの外来の鳥が中を舞い飛んでいたのだそう。

庭園の先には、さらに段丘を登るワイルドな自然の風景が続いていきます。

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