ビュットショーモン公園 parc butte chaumont

パリつ子気分を味わいつつ、19世紀パリにタイムスリップ

ビュット=ショーモン公園が位置するパリ19区は、中心からは少し外れているので観光やショッピングのついでには行きにくい場所です。逆に、パリジャン、パリジェンヌたちには根強い人気の週末の憩いの場。約25ヘクタールというパリで4番目に広いこの公園では、大きな池に洞窟や吊り橋などもある絵画的な風景の中を散策でき、パリの中にいるのを忘れてしまいそうなほど。ぜひ訪れてみたい庭園のひとつです。

19世紀パリの都市再開発、エトルタの風景

 初めてこの公園を訪れたときの、晩秋の朝早く、入口を抜けたところで出会った、大きな木々の樹冠を通り抜ける靄がかった光、その先の大きな池、背景の白い断崖の景観がとてもポエティックで印象的だったのを覚えています。白い断崖の上にはローマのベスパ神殿を模したという東屋のシルエットが見える、さながら絵画のような風景が現れます。

 ちなみにこの水辺と白い断崖絶壁は、印象派の画家たちが好んで描いたノルマンディーのエトルタの断崖の風景を模したものなのだそう。これでパリ市民は列車に乗らずとも、エトルタの風光明媚な風景を眺めることができる、という配慮もあったに違いありません。というのも、この公園が作られたのは第二帝政期、オスマンのパリ大改造下にアルフォンスが設計を担当し、1867年のパリ万博に合わせて開園しました。鉄道が最新テクノロジーだった時代です。
 かつてこの場所はパリ市の郊外で、パリの建築に使われていた石膏等の採石場跡でした。さらに近隣はゴミ処理場や処刑場などがあるような地区でしたが、ナポレオン3世はここを公園として再開発しようと決めます。

 フランス語でビュットは丘、ショーモンは禿山を意味します。採石場跡という場の条件を生かしつつ、大きな人工池に囲まれた中央の島、高低差のある起伏が広がる公園が整備されました。禿山というくらいですから、緑化するには百万㎥以上の植物土壌土を運び込む必要がありましたが、現在は、育ち過ぎなのではないかというくらいに緑豊かな公園になっています。

都市再開発の要としての公園や庭園

 19世紀当時の急速に拡大していく都市パリの再開発地区で作られた公園には、市民の公共衛生に役立てるという意図があったのは当然ながら、さらには再開発地に付加価値を与えるという役割がありました。公園はエレガントな鋳造の外柵で囲われており、境目の植栽には常緑の樹木を多く用いて、緑のスクリーンが公園の内外を分けています。つまり、公園の外側からも緑の存在を感じられるような配慮があり、整備された緑地の存在が隣接地区の生活の質と資産価値を上げることが意識されていました。同じ頃に作られたパリのモンソー公園などにも同様の配慮が見られます。

パリの公園、ロンドンの公園

 さあ、散策を続けましょう。前述の既存の地形を最大限生かした設計手法からくる大きな起伏のある構成がビュット=ショーモン公園の特徴であり大きな魅力なのですが、広々とした芝生面とところどころに植えられた大きな木々が織りなす風景には、どこかイギリス、ロンドンの公園を思わせるところもあります。
butte chaumont ビュット=ショーモン
 歴史的には、17世紀ルノートルのフランス整形式庭園がヨーロッパを風靡したのち、各地で流行したのはイギリス発の風景式庭園でした。フランスでも18世紀にはイギリス風の、絵画のような自然風景をつくる庭園のスタイルが広がり、例えばマリ・アントワネットのトリアノンの庭園は、全面的にイギリス式自然風庭園に作り変えられました。その後19世紀になって作られていく都市公園のスタイルには、インフォーマルなイギリス庭園の影響があります。当時のパリ市内に公園をたくさん作らせたナポレオン三世、実はロンドンでの亡命生活経験もあったので、ロンドンの庭園や公園を実体験していたはず。そんなところからも、緑に乏しいパリの街に公園を作らせることに力が入ったのではないかと思われます。まったく違うようでいて、大西洋が隔てるフランスとイギリスそれぞれの影響が行ったり来たりしているのが公園の空間作りに現れているのも面白いところです。

アウトドア・ファニチャーもポイントに

 ところで、ビュット=ショーモンをはじめとして、この時代のフランスの公園、庭園でよく使われたのがこちらのセメントを型取りした偽木材の柵や階段。実はセメント技術先進国だったフランス、すぐに朽ちてくる木材をセメントに取り替える試みでした。ちょっとわざとらしくもあるのですが、絵本の挿絵を思わせるようで、かわいらしくも見えるのが不思議です。
 また、公園の外柵やベンチ、街灯などには、共通してレトロな19世紀パリの雰囲気を醸し出すデザインが意識的に使われており、ちょっとしたデザイン・ディテールも逃さずに、パリという都市のイメージ・アイデンティティの表現として利用している点はなかなかです。

昔も今も、休日のエクスカーションを楽しむ市民の憩いの場

 さて、エトルタの白崖の再現風景について最初に書きましたが、園内を散策していくと、やはり既存の地形を工夫し、セメント技術を駆使した人工の洞窟や滝や流れがあり、吊り橋で人工池を渡って中央の島に着けば、パリを一望する見晴台が待っています。

いくつもの傾斜のある芝生の丘陵には思い思いに寝転がったり、ピクニックしたりする人がたくさん。作られた当時から、そして現在も、ちょっとした遠足気分の週末の散策やリラックスの場として愛されているビュット=ショーモン公園。手ぶらで来ても、フランス語でビュベットと呼ばれる、カフェレストランももちろんあるので、ちょっとした休憩にはもってこいです。レトロなパリを感じつつ、パリっ子気分を味わいに、ぜひ行ってみたい公園のひとつです。

公園内のレストランバーもちょっとレトロないい感じ。

●ビュット=ショーモン公園|Parc des Buttes-Chaumontへのアクセス
>メインアドレス:Place Armand-Carrel 75019 Paris
>入口のアドレス:Entrées aux 1-7, rue Botzaris ; 2-6b, rue Manin ; 55, rue de Crimée et 42, avenue Simon-Bolivar.
>最寄りメトロ駅
(7bis線)Buttes-Chaumont または Botzaris, ligne 7bis
(5番線)Laumière

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