エンケラドスのボスケ

トレリスの回廊で囲まれたボスケの中央で、瓦礫の間に溺れかかったような人物がひときわ高く噴水を吐き出しているのが、エンケラドスのボスケです。

ギリシャ神話の巨人族、エンケラドス

エンケラドスは、ギリシャ神話に出てくる巨人族の一人で、オリュンポスの神々との戦いで敗走し、ゼウスの稲妻で倒されたとされています。その後エンケラドスは、エトナ火山の下から炎を吐き続けていて、エトナ山の噴火は彼が痛みに耐えかね暴れて起こるのだと考えられているのだとか。

なるほどその話を聞くと、一見意味不明のこの噴水のシーンが生き生きとしてきますね。

ヴェルサイユ、神話と象徴の庭園

しかし何故に、オリュンポスの神々に負けた巨人族がヴェルサイユの庭園にいるのでしょう?すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、ヴェルサイユの宮殿と庭園の装飾全体を貫くメッセージは、ルイ14世の絶対王政の優位性のプロパガンダです。ギリシャ・ローマ神話をテーマにした庭園の至る所を飾る彫刻はそれぞれに、ルイ14世とその絶対王政の称揚を謳い上げる、絶対王権の象徴の空間でもありました。

エンケラドスの神話が象徴するのは、ラトナの泉と同様に、絶対王政に反逆する者の末路。フロンドの乱に対するルイ14世の勝利を象徴するとも言われていますが、要は、王様に逆らったら怖いぞ〜!ということでした。

修復で蘇った17世紀バロック様式の庭園装飾

17世紀後半にルノートルによって設計されたエンケラドスのボスケは、近年では最初に修復が完了し、当時のバロック的な姿を再び取り戻したもののひとつです。

中央で苦しみの火炎(噴水)を吐き出すエンケラドスの彫刻は、王の第一画家シャルル・ルブランのデッサンに基づいて制作された17世紀バロック様式。その周りの溶解した岩石などのロカイユと呼ばれる装飾、さらにボスケの円周を囲む木製トレリスの回廊も、アーカイブなどをもとに、17世紀当時の技法を研究してその姿が再現された貴重な庭園建築となっています。

トレリスの回廊のすぐ外側は、完璧に形作られたトピアリーや壺で飾られ、内側は、幾何学的な木組みのシルエットが美しい、心地よくアンティームな緑の回廊になっています。

もともと樹木に囲まれたボスケ(名前の由来はイタリア語のボスケット=木立から)は、全体的に見通しのきいた広い庭園の中の、親密な空間、隠れ家的なポイントとして作られていますが、もさっと茂ったクマシデやトレリスの回廊に囲まれたこちらのボスケも、外からは中の様子がほとんど分からず、回廊の中にはベンチも設置されていて、見学者が押し寄せなければ、ひっそりと愛を語ることもできそうな、隠れ家度120%の貴重な空間です。

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