ボデゴン=スペインの静物画に描かれたボタニカル

「ボデゴン」ってかなり耳慣れない響きかもしれないのですが、スペイン独特の静物画をいいます。
静物画自体が絵画のジャンルとして独立するのは17世紀頃から。それまで宗教画や歴史画の背景に描かれていた草花が、花瓶に生けられた花束や、他のオブジェとともに独立した主題として構成されて描かれるようになります。スペインの静物画は、主に台所の野菜などを主題として始まり、初期のベラスケスにも2点ほどその作例があります。
一口に静物画と言っても、やはり時代や国により様々なスタイルの違いがあるのをしみじみ感じる、スペイン的にカッコイイ雰囲気を醸し出すプラド美術館所蔵のボデゴン8点が長崎県美術館にて展示中です。

常設展の入口の小企画なので、常設展扱いで鑑賞できます。たった1室ですがプラド美術館の展示室をそのまま切り取って来たような完成度の高さです。点数が少ないことも、落ち着いて集中して鑑賞することへのプラスになっていて、満足度は非常に高いです。
IMG_9339今回作品をみて感じたボデゴンの魅力は、圧倒的な暗さにあるのではないかと思います。光と影のコントラストが強い南の国の感性なのか、影が迷いなく黒い。画面が引き締まり、テーマとなった花や果物、野菜にはただならぬ重厚感と非日常的なドラマチックなムードが生まれます。
フライヤーにも使われている「フアン・デ・アレリャーノ《花籠》1670年頃」(↑上の写真)もしっかりと暗めの背景に、花籠の中央あたりにスポットライトが当たったように浮かび上がっています。チューリップやグラジオラス、アネモネ、オダマキ等様々な花とテントウムシや蝶、蜂っぽい虫、なども詳細に描きこまれた画面は、極めてゴージャス。

写真がなかった時代の絵画の魅力はいかに本物らしさを表現するか。花弁や葉の質感、蕾から開ききって花弁を落として朽ちていく姿を余す処なく捉えて描き込む。そして、朽ちていく植物の姿はそのまま人間の命の脆さ儚さの表現とされたり、蝶が人の魂を表現するなどの象徴的な意味が載せられていくのですが、ここではまず、この豪奢な花籠をそのままに愛でたいと思いました。

ちなみに長崎県美術館(建築は隈研吾)は、第二次世界大戦中に特命全権公使としてスペインに駐在した須磨彌吉郎(1892~1970)が在任中にスペインなどで収集した1000点を超える美術品のうちの約500点の須磨コレクションを母体としていることから、スペインとの関わりが深く、この春は10周年記念としてプラド美術館から借用したボデゴンの小企画展を開催中です。海外から借用するアート作品の展示でも、興行的な大展覧会ばかりでなく、このような小企画が増えるといいなあと思います。
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